「丸井くーん!これ食べて!」 「おおっ!サンキュ!」 「丸井くん、差し入れです。」 「ありがとなっ」 「ブン太、今日うち来ない?」 「悪い、今日はダメだ。また今度な。」 毎日のように、女の子から食べ物をもらい、 毎日のように、違う女の子に誘われる。 「軽いんだろうなー」 「は、冷めてんね。」 「みんなが熱すぎるだけ。」 私はテニス部のレギュラー、特に同じクラスの丸井ブン太が嫌いだった。 「女の子にモテすぎると、調子乗ってチャラ男になっちゃうんだよ。」 「チャラ男って・・・」 証拠に、丸井ブン太の隣を陣取るのは、いつも違う女の子だった。 長くて1週間程度。 私から言わせると、ありえない。 「ひどい言われようじゃのぉ・・・」 「仁王」 同じくテニス部レギュラーの仁王雅治とは、家が隣同士の幼馴染。 テニス部に入ってからの仁王は、丸井ブン太と同類。 けれど、それまでの彼を知っているため、嫌いにはなれない。 かと言って、今の彼は好きじゃない。 「あんたも同じでしょ。」 「俺は、お前さん一筋じゃよ?」 「へぇ・・・」 「、」 「後ろで控えてる女の子はそのままでいいの?」 「ちっ・・・」 仁王も、軽くなってしまった。 小さい頃は可愛かったのに・・・ 所詮、男はみんなそうなのだ。 少しモテると、いい気になって女をとっかえひっかえ。 信じられない。 「あ」 仁王を冷ややかな視線で追っていると、その進行方向に丸井がいた。 一瞬、目が合う。 すぐに逸らす。 嫌いな男と目が合うなんて、今日はついてない。 「え、うそでしょ。」 「んー?どしたの。」 「来る」 「は?」 一瞬だけ視線が重なっただけで、勘違いするのかこの男は。 丸井ブン太が、私の所へ向かってきた。 話しかけてくる。 「お前、仁王の幼馴染なんだろぃ?」 「それが何?」 「何?もしかして俺のことキライ?」 「わかったなら私の目の前から消えてくれない?」 「・・・ちょっとあんた言いすぎ。」 「へぇ・・・っていうんだ?」 「呼ばないでよ。」 本当に軽い奴だ。 気に入らない。 嫌いなタイプにストライク。 「俺、のこと落とすぜ。」 「は?馬鹿じゃないの。」 「いや、お前は俺を好きになる。必ず、な。」 「何を・・・――」 「え・・・」 ありえない。 自分のことを嫌いだと言う女にまで手を出すの? 教室のど真ん中で、堂々とキスまでするのか。 「シクヨロ☆」 「――っ」 「ファーストキス?だったら嬉しいんだけど。」 「死ねバカ!」 「あ、っ」 ビンタだけでは気がすまない。 グーで殴った。 「いって・・・」 ありえない。 嫌いな男にキスされるなんて、今日は最悪だ。 「ファーストキスは、小学生のときにお隣さんとしたわ!」 冷静な判断ができなかった。 確実に明日は仁王ファンにシメられる。 丸井ファンにもシメられる。 後悔しながら、友人を引っ張って教室を出た。 今日は、最悪だ。 きっと、明日も最悪だ。 嫌よ嫌よも好きのうち 「・・・マジで?」 「マジで。」 「くそ・・・ぜってー落とす」 「アイツは簡単には落ちんぜよ」 ------------------------------------------------------------ ブン太は本気と遊びの境界線がわかんなくなってるといい。 遊びと同じように本気の相手を誘っちゃうと、ああなる。 っていう感じが書きたかった。 ヒロインの初ちゅー奪ったのが仁王ってのは個人的に萌え← '09.08.18 桐夜 凪 ------------------------------------------------------------ |