夏祭りとか、花火大会とか 自分からすすんで行くなんて柄じゃないから、 いつも私は誘われないと行かなかった。 もちろん、私から誘うなんてなかったし、 誘われなくても1人で行くなんてことはなかった。 「好きなんだけど、付き合ってくんね?」 「・・・いいよ」 春、彼氏ができた。 いいよ、なんて無愛想だったかなって、後から思った。 本当は、ずっと好きだった。 すごく嬉しかったのに、って、ちょっと後悔した。 けれど彼は、その場で飛び上がって喜んでくれて、照れくさかった。 「俺、ちょっとのこと信じられなくなってきてる。」 「え、」 「しばらく、距離置こうぜ」 先週、彼はそう言った。 原因は、わかっていた。 私は、素直じゃないから、好きってことの表現の仕方が曖昧で。 彼には、不安ばかり感じさせていた。 「どうしよ・・・」 今日は、付き合い始めて4ヶ月の記念日で、 町内の夏祭りの日。 私は、今まで一度も誰かを誘ったことはない。 行きたいとも、思ったことがなかったのに、 「なんで、喧嘩なんかしてんだろ・・・」 朝からずっとこればっかり。 距離を置いたって、好きって気持ちは変わらない。 むしろ大きくなるから、学校に行っても目も合わせてくれない彼に、 胸の奥が締め付けられるばかりで。 「電話・・・出るかな」 我慢できなくて、ちゃんと謝ろうって、 携帯電話を手に取った。 ――♪ 発信ボタンを押す前に、彼からの着信を示すメロディが流れた。 「・・・もしもし、赤也?」 「?」 受話器の向こうの彼は、少しふてくされたような声で、 私の名前を呼んだ。 「あの、私・・・」 「俺っ!ちょっと言い過ぎたかなって、」 「赤也・・・」 「だから、その、謝らなきゃって思って・・・」 彼の声は、震えていた。 「わ、私も、今、電話して謝ろうって思って。」 「え・・・」 言わないきゃいけない、と思った。 今、ちゃんと伝えなければ。 「ごめん、赤也」 「――っ」 「私、ちゃんと赤也のこと好きだから・・・――」 「あいたい」 「え?」 「あいたいあいたいあいたい今すぐ会いに来い!」 そう言って、一方的に電話を切った彼に、驚きながらも 愛しさが溢れて、涙が溢れて、微笑みがこぼれた。 「・・・だったら」 お洒落して(浴衣は苦手だから)、彼の家に行こう。 それで、柄にもなく誘うんだ。 りんご飴、食べに行こう ほら、今の私の顔みたいでしょ? ------------------------------------------------------------ 夏ですからね! 意地っ張り赤也とイベントごとに興味なしヒロインで夏祭り。 最近、なんか甘い感じが書けないのはプライベートの所為だと思う でもなんだか夏休み入ってからハイスピードで創作できるぞ。 頑張ろう・・・ '09.08.10 桐夜 凪 組み込み式お題:「あいたいあいたいあいたいいますぐあいにこい」 配布元:リライト ------------------------------------------------------------ |