『好きなの・・・』


今にも泣き出しそうな表情をして、二年前のあの日、君が言った。


『・・・ごめん。幼馴染以上には想えない。』


あの頃の俺は、本気でそう思ってたんだ・・・―――






オサナナジミ、








〜〜!」

「わっ!」


朝、前を歩くを見つけて、後ろから飛びつく。

今まで毎朝のようにしてきたその挨拶を、突然拒まれた。


「え、英二・・これさぁ、もうやめてくんないかなぁ?」


少し申し訳なさそうに、でもはっきりと、は言った。


「え?」


俺は、理解できなかった。

が俺のすることを拒むなんて、今まで一度もなかった。

なのに、どうして?


「私ね、彼氏ができたの。」

「・・・か、れし?」

「うん。だから、ね?学校にも一緒に行けないから。」


それだけ言い残して、振り向かずに歩いていく。

俺だけが、突きつけられた現実を理解できずに――理解なんて、したくない――取り残された。







とは家が隣同士で、赤ちゃんの頃から知ってて・・・・・・

知らないことなんて、一つもないと思ってた。

今まで、俺の中で一番大切な女の子だった。

そして、今も。


その気持ちが恋心だと、3年になって気がついた。

二年前のあの日、ガキだった自分の愚かさに、後悔していた矢先だった。







「・・・・・・・――っ!!」


ピクッ、と肩を揺らして、ゆっくりとが振り向く。

思わず引き止めてしまった。

もう、後には引けない。


「・・・好き・・・・・・」

「っ・・・」


の大きな瞳が、さらに大きく見開かれる。

その目には、うっすらと涙が浮かんでいるのが見えた。


――あぁ・・・また、傷つける。・・・また、困らせる。――


ふいに思ったのは、そんなことだった。


「遅い・・・」


よく聞かないと聞き取れないくらいの声で、が呟く。


「遅いし、ズルイ・・・」

・・・っ」


無意識のうちに、の方へ足が動く。


「英二は、いつもズルイ・・・」

「・・・ごめん、でも俺・・――」

「もう英二のこと、幼馴染以上には想えないの。」


その言葉は、俺の足を、思考を、止めるのには十分すぎた。


「あの頃とは、違うの。私は、英二以外を選んだの!」

「・・・・・・」

「英二が、そうさせたの・・・だから、もう、そういう感情・・・"なし"にしよう?」


胸の中に、ポッカリ穴が開くって、こういうことを言うんだ・・・。

案外冷静にそんなことを考える頭は、直後、真っ白になった。


二年前のも、こんな想いだったのだろうか・・・?

止まる術を知らない涙は、冷たい真冬のアスファルトを虚しく染めた。










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なんだかヒロインも英二も…
少し自己中になってる気がするのは私だけでしょうか・・・?

何も知らなかった12歳の英二は、
大人へと近づく過程でその気持ちに気付くのです。

何かを知っていた12歳のヒロインは、
大人へと近づく過程で、その気持ちに終止符を打つのです。

英二とヒロインは、成長する時間がずれた、
ただそれだけのことなのです。


不変なんて、ないのです。
                        08/03/27 桐夜 凪
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