バレンタインなんて、大嫌いだ。









St. Valentine's Day with M.Takeshi














中学生の頃、友人の後押しもあって、思い切って好きだった男子に告白した。

結果は、玉砕。私が告白する前に、既に他の子に告白されて、付き合うことになっていたらしい。


高校生の頃、中学の時の失敗がトラウマになっていた私に、何故かこの時は何かが降りてきたらしく、

告白してやる!というやる気、勇気がみなぎった。

結果は、またも玉砕。しかも、中学の時と全く同じ状況だった。


私はなんて男運がないのだろう。

真面目に考えたこともあった。

私の何がいけないのか。


・・・確かに、可愛くはない。キレイでもない。でも、不細工ではない。と、信じたい。

世の男共はそんなに、顔が命か。

それならば、もう恋なんてしない。















そう誓ったのは、一昨年のバレンタイン。

もちろん、今年もそんな相手は居やしない。作る気もない。


そんな時、彼は現れた。





「・・・さん?」

「・・・誰。」


何気なく立ち寄った喫茶店の店員に、突然下の名前で呼ばれて、いい気分の人なんてそうはいないだろう。

例外なく、私もそうだ。警戒心を隠す気もない。

しかし、そいつはパァと顔を輝かせる。


さんじゃないッスかぁ!俺ッスよ!俺!」


誰だよ。俺じゃ解らん。

そう言えば、


「桃城です!中学で一緒でした!一つ下の!」

「桃城・・・?」


聞いたことある名前だ・・・。

あぁ、アイツか。


「いつもリョーマと一緒に居た。」

「そうッス!いやー久しぶりッスね!」

「・・・あんたと話したことあったっけ?」

「ないッス!」


即答。

そんなに笑顔で言われると、逆に困ってしまう。

しかし、そんな私を気にすることもなく彼、桃城クンは、この後、空いてますか?なんて暢気に聞いてくる。


「う、うん。まぁ、空いてるけど・・・・。」

「マジ!?あ、いや、じゃあ、ちょっと待っててください!すぐ上がるんで!」


ハイテンションに流されてしまい、結局一緒に帰ることに。

途中に見つけた公園のベンチに腰掛け、これも途中で買った肉まんを頬張りながら昔の話で盛り上がる。


「越前、元気ッスか?」

「うん。ずっとテニスしてるよ。バカだね。あの子も。」

「ハハッ!越前らしいッスね。」


まぁ、だいたいはこんな感じでリョーマのことだけど。

共通な話題が他にない。

ふいに、桃城クンが真剣な表情になる。


さん、今、彼氏とか・・・いるんスか?」

「・・・いないよ。作る気もない。」

「あ、の・・・」


作る気もない。

そう言った直後、桃城クンの表情が曇った。

あぁ、この子、私のこと好きなんだ。


「チョコ?もうすぐバレンタインだね。」

「え?あ、・・・く、くれません・・・よね?」


私より一回りデカいくせに、縮こまって上目遣いになる。

その様子が、少し可愛く思えて、思わず言ってしまった。


「・・・あげようか?付き合うかどうかは・・・君次第だけどね。」


あの時の彼の笑顔は、とても輝いて見えた。






そんなに、嬉しいか?

       ・・・可愛いなこの野郎。







2年間守った誓いも、3年目には可愛い後輩によって、破られた。

バレンタインなんて、大嫌いだけどね。










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バレンタイン 配布終了   '08/02/11 桐夜 凪
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