無自覚タイフーンラブ









「あ…丸井先輩」
「んぁ?何だよ、赤也」
「あれって先輩っスよね??」




部活帰り。
いつものレギュラーの面々と一緒に正門を抜けたところで、赤也がそう言って 前方を指差した。
俺もつられる様に前へと視線を向けると確かに数十メートル先を珍しく1人で 歩いているが目に入って。




「丸井先輩って、いっつもあの人にお菓子もらってるんスよね?」
「まーな。アイツ料理部だし色んなもん作ってるからなぁ……って、そのいっつも って何だよ、お前」
「だってホントのことじゃないっスかー。丸井先輩ってときどき部活終わったあと どこからかケーキの箱持って部室に戻ってくるし」
「ケーキだけじゃなくマフィンやクッキーもあったな。それも週2は必ずと言って いいほどだ」
「柳…」


お前ってヤツはそんなとこまで観察してんのかよと俺はガクリと頭を垂らした。
すると近くで誰かがクスリと笑う気配を感じて。


「幸村?」
さんが足を止めてこっちを見てるんだけど?」
「は…?」


幸村からすぐに前へと顔の位置を戻すと確かにのやつが歩みを止めて俺達を 振り返っていた。
アイツ…どうしたんだ?と内心首を傾げるとが小さく手を持ち上げて…。
だけどその手に持たれている真四角の箱の存在に俺は微かに目を見開いた。

あ、あれは、もしかして…!!


「今日はショートケーキじゃ」
「へ…?」
「先ほど部室を出る前に女子の方が仁王君にそう言ってさんが持っていらっしゃる アレと同じ箱を渡されてましたから」
「なっ…お、お まえ…それを早く言え!」
「楽しみは後にとっておいた方がいいって言うじゃろ?」
「アイツが帰っちまった後じゃ意味ねーだろぃ!」
「ブンブンは我が侭じゃな」
「うるせー!」


ワザとらしく悲しげな顔をする仁王をジロッと睨み上げたあと、
俺は瞬時に地面を 蹴っての元へ駆け出した。

俺と同じクラスの女子であり、実は1年の時からずっと同じクラスだったりするん だが、何故か近くの席に並んだことは一度もなく。
だけど、1年の頃アイツと帰り道バッタリ偶然あって、その時料理部だってことを 知って…そう…あの時も今日と一緒の…確かショートケーキをもらったんだよなぁ。
アイツからすげぇイイ匂いがして手に持ってた箱を見て。
中身を見せてもらって思わず食いてぇ…って言っちまって…。

そう。
そこから始まった…。
俺がに菓子を貰いまくるっつーオカシナな友達関係が。


にしても だ!
まさか今日ケーキ作るだなんて俺は聞いてねーぞ!



!」
「はいはい。いつものコレでしょ?」
「じゃなくて、今日は実習じゃねぇって言ってただろぃ?!」
「あぁ、アレね。何か急に予定変更でケーキ作ることになっちゃってさ…って どーしてそんな怒った顔してるのかな?これ欲しくないわけ?」
「…っ、ほ、欲しいに決まってるだろぃ!」
「なら初めからそう素直に言いなさいって」


はい と真っ白な箱を差し出してくるに俺はぐっと押し黙りつつもその箱を 受け取って。
ぱかりと箱を開けてみればそこには真っ白な生クリームで綺麗にデコレートされ たショートケーキが目に入り俺は知らず口元を緩めた。

あ…いや、でもちょい待ち。

「……苺がねぇーぞ」
「……」

「おい、?」
「えーと…ですね…じ、じつは食べちゃいました」


アハハーと笑うに俺はひくっと唇を引き攣らせて。
こ、こいつショートケーキに一番大事な苺を食べただと…?!


「だってですね、すごーく美味しかったんですよ!」
「なに開きなおってんだよ!」
「…もー別にいいじゃないの。ケーキは食べられるんだし」
「…っ」
「ほらほらブン太さんの大好きなケーキなんですよ?味もアンタの保障済み!」
「それは…っ、そーだけどよ…」
「それじゃテニス部ファンに見つかる前に私は行くわ」
「…またそれかよ。別にいいだろぃ?俺らは同じクラスメートで友達でただ 喋ってる、それだけだろーが」


何度も何度もにこの台詞を聞かされている俺としては、すでに耳にタコ状態で。
呆れた風に溜息を吐くと、が突然ニッコリと微笑んでいきなり俺の両頬をむにっと 指で掴んできた。 そしてそのまま思いっきり引っ張られて…。


「あーんーたの目は節穴です か!」
「いっ、いででででっ!!」
「…2人共何をやってるんだ」
「あ、柳…ってテニス部れぎゅらー」
「なんじゃその嫌そうな顔は」
「煩いわよ、仁王…って、あれ?切原君もいたんだね?」
「はい!お疲れさまっス!先輩!」
「うん、お疲れさま。切原君はいつも元気だねー。ホント、ブン太と違っていい子だし」


人の頬をこれ以上伸びないっつーくらい伸ばしたあと、いきなり手を放すに 俺は自分の両頬を擦りながらジロリと見下ろすと、何よその顔はとも俺と同じ ように睨み上げてきて。


「本当にブン太ってお菓子をあげるときは子供みたいに可愛いんだけど、それ以外は ぜんっぜん可愛くないわよね」
「男が可愛い言われて嬉しいわけないだろぃ!」
「切原君は本当に素直でいい子なのに…」
「お前な…いっつも俺と赤也を比べるなって言ってるだろぃ!つーか赤也のどこが いい子なんだよ」
「だからアンタの目は節穴かって言ってるの」
「はぁ?!」
「もういいわ。それより、幸村」
「ん?」
「…もう少しブン太をちゃんと躾てね?それじゃ皆、おつかれー」

し、しつけ…?!躾だとーーーーー?!
言うだけ言ってそのままくるリと踵を返すに俺は思いっきり背後から怒涛の 叫びを放ったがアイツは途中でピタリと足を止めると、
明日はベリー&ベリーマフィンだからと…。
そう告げるとは一度たりとも俺達を振り返ることなく先に行ってしまった。


て言うか…今のって…。


「どうやら明日のメニューらしいな」
「いいなー丸井先輩。先輩のお菓子いっつも食べられて」
の料理はブンブン限定じゃからな」
「は…?」
「それに、丸井。知ってるか?」
「な、なんだよ、幸村…」
「顔が緩んでるよ?」
「…っ?!」
「まぁ。お前っての前じゃ、思いっきり素出してるしな」
「あぁ、確かに。丸井君は他の女子にはいつもクールですからね」
「うむ」


え゛…なんだよそれ…。
皆からいやに面白げな表情で見遣られてしまい俺は思わず顔を引き攣らせて しまって。





てか、お、おれってそんなにと他の女共と態度が違うのか…?!




「ブンブンは無自覚じゃな…」
「だけどさんも無自覚だと思うよ?」
「ってことは…幸村ブチョー…もしかして丸井先輩と先輩って両思い?!」
「う〜ん、それはどうかな…?でもそろそろ気付いてもいいと思うんだけどね。
3年間も他の皆には内緒の…秘密の関係を持ってるんだから」
「…てことは、両思いなんスね…」
「本当に仕方のない人達ですね」
「真田にすらバレてるのにね」
「幸村…それはどういうことだ…」






近くで赤也達が何かコソコソと喋っているのは気配で感じてはいたが、
まさか、そんな会話を交わされてるとは知らず。




俺は1人ぽつねんと佇んだまま今までのことを振り返っていた…。











だけど…。









「やっぱ、わ、わからねぇ……」













fin.







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こんなオチで(苦笑)


BlackTearSの桐夜 凪さまに捧げます。
相互記念リク:ブン夢でした。
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BABY+ kiya様より、前サイトの頃に相互記念にいただいたものです。

いやー・・・。ブンちゃんLOVE


kiyaさま サイト → BABY+
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