まさかとは思った。
けれど、こんなに事が大きくなるとは・・・思わなかった。
A Secret Treaty 五ノ巻 “別れ”
姉さんが、死んだ。
悔しくて、悲しくて。
けれど自分には何もできなくて。
それが更に悔しくて。
・・・気がついたら、此処にいた。
「・・・列車?」
目の前には、黒く長い、列車。
それに乗り込むのは天人も人間も、たまに猫や犬まで様々だった。
「此処は・・・どこでィ・・・」
沖田は、小さく呟いた。
それと同時に、目を見開く。
「ねえ、さん・・・・・・?」
視線の先には、死んだはずのミツバがいた。
「どういうことなんでィ・・・此処は、此処はどこなんでィ!!」
叫びながら、姉の元へ走る。
だが、それは黒い服を身に纏った誰かによって阻まれた。
「どいてくだせェ、俺は今急いで・・・っ」
「総悟、」
「!?」
その誰かに名前を呼ばれ、顔を見上げる。
それは、紛れも無く、だった。
「・・・さん?」
「総悟、お前、こんなところで何をしてる!」
「え・・・いや、さんこそ・・・」
何故此処に?
そう問いかけようとして、はたと気付く。
?否、これは、だ。
「まさか・・・・・・」
「此処にいるということは、お前・・・・・・」
死んだのか?
その言葉に沖田は確信する。
「死人・・・列車・・・」
何故だ。
死んだ覚えなど、微塵もなかった。
ただ覚えているのは、姉の死と、己に宿った悔恨。
「お前、何故死んだ?」
「ま、待ってくだせェ、さん!」
「・・・」
「俺は、死んじゃいねェ・・・」
「ならば何故」
「分からないんでさァ・・・ただ、」
「ただ、何だ?」
「姉さんが、死にました。」
・・・こんなことが、あってたまるか。
総悟の姉が死んだことで、総悟が一緒に此方に引き連れられて来たとでも言うのか。
とりあえず、と車掌室に連れ込んだ沖田を見ながら、は思う。
“・・・”
どうする・・・
そう思いながら煙草に火を点けたとき、声が響いた。
「・・・なんだ」
“私を、一旦戻せ。”
「・・・何のために。」
“総悟の安否の真相を、確かめてくる。総悟をどうするかは、それから決める。”
「それから決める・・・?此処に来てしまった者は、戻れない。」
“分かってる”
「無理に戻すのは、違法だぞ」
“分かってる”
「・・・・・・行け」
からへと人格が変わった時には、その肉体は既に屯所に在った。
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ミツバの死が元で、できた話なんです、この連載