・・・もう少し、静かにはできないのだろうか。







#4 転入生も大変だ。







新学期。学校大好きな中学生なら、この日の朝は待ちきれずに早く起きてしまうのだろう。

しかし、残念なことに、私はもともと学校という社会集団がそんなに好きではない。

そのために、目覚ましがしめす時刻と、部屋の時計がしめす時刻に1時間のズレがあったなんて気づかなかった。


「要するに、寝坊したんでしょう?」

「・・・はい。」


転入初日から早くも遅刻してしまった私は、朝から窪田先生にタラタラと文句を言われ続け、

長々と言い訳がましく遅刻の理由を言わされ、言わせたのは先生なのに「話が長い」とキレられた。

ちなみに今の時刻は10時24分。2時限目ももう終わりだ。


3時限目から授業に出席しなさい。

教室に行けばいいから。あぁ、次の授業は数学ね。ほら、あの先生よ。そう、頭の可哀想な人。

つまりハゲてる人を指差して、その場から早々と立ち去った先生。

1人残された私は、窪田先生曰く頭の可哀想な先生に声をかけるため、そこから立ち去った。


・・・てか、クラスどこだよ。聞いてないよ。





頭の可哀想な先生は、竹下先生というらしい。


「あぁ、は3年3組だ。次が俺の授業だからついてくればいい。」


竹下先生に声をかけると、そう返されたので、大人しくついていくことにした。



「・・・授業を始める前に、今日は転入生が来ている。ちょっと事情があって遅れたが・・・入れー。」


遅刻の原因は、うまく(?)はぐらかしてくれた。

言われたとおりに教室に入る。

こうも注目されると、恥ずかしくもなるもので。自然に顔が下を向く。


、です。よろしく。」


それだけ言うのが精一杯だった。あれ、私、こんなに恥ずかしがり屋だったかな。

男の格好をして、見た目も全然女に見えない奴が、心の中で「私」なんて言ってるって知ったら、

みんなどう思うんだろうな・・・。きっと、ドン引きだろう。

ちょっとそれも哀しい。バレないようにしないと。


じゃん!」

「ほぉ・・・同じクラスか・・・。」

「は・・・?」


頭の中でごちゃごちゃ考えて、顔も下に向けていたものだから、このクラスにテニス部がいることなんて気にしていなかった。

しかも、それが、丸井ブン太と仁王雅治だなんて。

急に名前を呼ばれて、顔を思い切り上げたので、クラスのみんなが私に注目する。

うおっ。止めて欲しい。女子の視線がマジ痛い。


「「「キャーーーーー!!」」」


な ん な ん だ 一 体

女子は突然叫んだかと思うと一気にざわつき始めるし、

男子は男子で「またテニス部かよ・・・はぁ・・・。」みたいな落ち込み入ってるし、

ブン太は目輝いてるし、仁王は口元がつりあがってるし。

ていうか私テニス部だなんて一言も言ってない。(幸村脅され頼まれて入ることになってるけど)


「静かにー!授業始めるからとりあえず黙れー。」


結局、頭の可哀・・・(略)竹下先生が叫ぶまで、女子のざわめきと男子の落ち込みは収まらなかった。




数学の授業も、初めてやった時は訳わかんない公式とかで頭ごちゃごちゃだったのに、

2回目となると流石に解るわけで。「君頭いいー!!」なんて女子に騒がれて。

その度に男子がため息ついて。ていうか俺、今年高校生になるはずだったんだけど。




授業のあとは転入生にはありがちな質問攻め。

世界が違ってもそういうのは一緒なんだな・・・とか思いつつ、ほとんどの質問を軽くあしらっていた。


「うおー・・・お前人気者だな!!」

「あぁ・・・ブン太。助けてよ。疲れた。」

「無理じゃな。あの感じじゃと・・・ファンクラブでもできるんじゃなか?」

「はぁ?」


ファンクラブですか?勘弁してほしい。