#5 格闘技なんてできません。
「先輩っ」
部活が終わって、部室に着替えに行こうかと足を踏み出した時、
後ろから赤也がを呼び止めた。
「・・・?」
悪いことなんだけど、気になるし。
ひっそりと見つからないように聞き耳を立てる。
「今日、この後何か予定ありますか?」
「え?特にないけど・・・。」
「マジッスか!じゃあどっか遊びに行きません?」
何ぃ?!赤也のくせに俺より先にと放課後に遊びに行くなんて百年早い!
「・・・乱入するしかねぇだろぃ。」
一言呟いて、部室に向かった。
赤也に誘われて、ゲーセンに行くことになった俺たち。
後ろからレギュラーがぞろぞろとついて来ていることは気のせいにしたい。
会話が駄々漏れだけど気のせいにしたい。
「放課後にげぃむせんたぁに来るなどたるんどる!」
そう言いながらも、珍しそうに周りをキョロキョロと見渡しながら先頭を歩く真田。
「じゃあなんでついて来たんだよぃ。」
ブン太が冷めた目で真田に言うと、幸村がさわやかな笑顔で言った。
「あぁ、俺が連れてきたんだ。」
「・・・なんでまた。」
「幸村が弦一郎にゲームをやらせていろいろと楽しむ確率90%だ。」
「・・・・」
いろいろの意味を想像して、最近真田がすっごく可哀想に思えてきた俺。
「正解!よく解ったね、柳!ご褒美に真田と一緒に遊べる権利をあげるよ!」
もちろん今日だけね。とかなんとか言いながら、さりげなく後をつけてくる奴等。
つーかいらねぇよそんな権利。
赤也は全く気付かずに、お目当てのゲームを見つけたのか、目を輝かせている。
「先輩っ!これ!これやりましょう!」
「・・・え、」
赤也が指差したのは、難しそうな格闘ゲーム。
「待って赤也!俺、格ゲーなんてやったことないよ?」
「えー?できないんスか?」
じゃあ今度俺ん家で特訓しましょう!
なんて暢気なことを言う赤也の後ろから、
ブン太とジャッカル(主にブン太)が、何故か激笑顔で近づいてくる。
と、そのまま赤也に激突した。(主にブン太ていうかブン太)
ぶっちゃけ何がしたいのか解らない。
「痛っ・・・!?」
「よぉ赤也。」
「丸井先輩っ?!こんなとこで何やってんスか?!」
「お前こそ何やってんだよぃ。赤也のくせに抜け駆けか?」
しかもさりげに家に招待してるし?
何言ってんだあいつ。
別にいいんじゃねぇの、後輩と遊ぶのも。
てかジャッカルがいる意味が解らない。
さっきから(最初から・・・?)全く言葉を発してないけど。
「何言ってんスか丸井先輩!普通にゲームしにきただけッスよ!」
「・・・じゃあ勝負しようぜぃ?」
「え?・・・いいッスけど。俺、結構やりますよ?」
得意げに、負けるなんてありえないってくらいの表情で赤也が言う。
「負けるわけがないだろぃ?」
強気な発言をしたブン太が、そのまま一歩下がる。
自然とジャッカルが前に出た。
「ジャッカルが!」
「え?俺?」
ジャッカルはそのためか。
・・・哀れだね。
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