#8 東京では地区予選してますが何か。







「そういえば・・・もうすぐテストだね。」


全ては、幸村のこの一言から始まった。


ーっ!解んねぇ!」

「俺もッス!」

「はいはい、今行くよ!」


今日は雨だから早く帰れるなんて、浮かれた俺がバカだった。

普通の中学は試験週間っつーのがあって、

試験の1週間ぐらい前から部活中止とかになったりもするけど・・・・・・

流石というかなんと言うか。

立海はそうはいかなかった。

部活もいつもと同じようにやるから、帰宅してからも疲労で勉強どころじゃない。

だから雨が降ってて、早く帰って勉強できると思ったのに・・・・・・っ!


「なんで俺、家庭教師みたいなことしてるわけ?」

「え?が頭良いから。」


何そんな当たり前なこと聞いてんだよとでも言わんばかりの表情でブン太が答える。

・・・実年齢知ったらどう思うんだろ。


「幸村とか、柳とかいるじゃん」

「あの二人は恐いんスよ!」


・・・そう言われると、言い返せない。

ごめんね赤也、ブン太。

すっげぇ解るわ。

仕方ない。我慢しよう。

幸村や柳、柳生はもちろん、真田、仁王まで頭は良いみたいだから教えるのはこの二人でいい。


「じゃあ赤也、ちょっとこの問題解いてみて?」

「ウイッス」


言いながら渡したのは基礎的な文法問題。

単語の並び替えの問題だから、勘でもなんとか10問中4問くらいは当たるだろう。


「・・・ワス・・・?・・・・・・コッ・・・クイン・・・・・・・・・?」

「・・・・・・」


並んでいる単語は、《was/cooking/I/then》。

問題の日本文は、《私はその時料理をしていた。》。

簡単なものを選んだつもりだったのだが・・・

赤也のおバカっぷりは、俺の想像を遥かに越えていた。


「私は・・・が、I・・・で、その時・・・・・・ワス?」


とりあえず、単語の読み方から入るべきか・・・・・・?


「・・・う、うん。いいよ赤也、まず単語やろうか。」

「う、ウイッス・・・」


赤也が必死に単語帳を捲る間、これまたプリントとにらめっこしているブン太を見ることにした。


「何、どれが分かんないの。」

「あ?あ゛ー・・・分からんところが分からん!」


そうですか。

全部分かんないんだろうね、きっと。

ブン太が取り組んでいるのは、数学の二次方程式。

自分が中3の頃、この時期にここまで進んでたかな・・・と思いつつ、プリントに目を通す。


「・・・1番から順番にいこうか。」


因数分解かぁ…

中学の頃、頭を捻りながら考えた自分の姿を思い出しながら更に思う。

高校になると、もっと意味分かんなくなるけど・・・

こいつ等大丈夫かな?


「公式は覚えてるよね?」

「・・・?」


俺の質問に、

眉間にしわが寄るブン太。

その表情からは、「何言ってんだコイツ」としか読み取れない。


「・・・公式からやろうか。」

「・・・お、おう。」


何故、この2人が揃うと同じパターンになるのか。

結局、その日一日やったことと言えば、

赤也は単語の暗記、単語の簡単なテスト

ブン太は因数分解の公式の暗記、プリント(1枚10問)1枚










で。



「1週間頑張った結果が、コレなわけ?」


大魔王幸村のとても恐ろしい微笑が待っていたことは、

言うまでも無い。


「・・・なんで?」

「ん?どうしたの、。」

「なんで俺まで正座してんの?」

「連帯責任に決まってるでしょ。何言ってんの。」