これが、関東大会1回戦・・・?


「ゲーム青学、1−0!」


息が止まりそうな程の長いラリー


「手塚・・・国光」


思わず、呟いていた。







#12 何かが弾ける音がした







「ええっ?!俺も行くの?」


放課後、珍しく真田が教室に来た。

明日の関東大会1回戦、青学対氷帝の試合を一緒に見に行ってほしい。

相変わらずの仏頂面で、そう言った。


「柳がビデオを撮りたいらしくてな。頼めるのがお前くらいなんだ。」

「う・・・うん、解った。行くよ。」


と、よく分からないまま引き受けたのはいいが、


「こんな試合・・・中学生でしょ・・・?」

「これが手塚さんなんすよ。」

「手塚・・・って、そんな」


明らかに次元が違う。

もうここまでくると中学生じゃないよ・・・


「俺の基準が間違ってたのか・・・?」


「え?何スか?」

「いや・・・」


漫画の世界ってこんなもんなのかな・・・

1つ年下が恐いよ・・・

なんて思っていたら、柳がいぶかしげに言った。


「おい弦一郎、おかしい」


そうだよ。おかしいよ。

即座にそう思ったが、どうやら的外れだったらしい。


「跡部の奴、まだJr選抜合宿で見せたアレを出してない。」


そう言った。

アレって何だろ・・・


「うむ。あのたまらんスマッシュだな!」


真田の応答は、俺には理解し難かった。


「た、たまらんスマッシュって?」

「跡部の必殺技だ。」

「か・・・かめ○め波的な?」

先輩、アンタ馬鹿でしょ」

「わあ・・・赤也にだけは言われたくない」


ああ、あとブン太にも。


「簡単に言うと、2段階に分けてポイントを取るスマッシュだ。」

「2段階?」

「一打目で相手のラケットを弾き、二打目で決める。」

「凄いけど・・・さっきからスマッシュ打ってないよね?

 チャンスは何度かあったはずだけど。」


あ・・・それがおかしいのか。


「跡部は、持久戦に持ち込む気だ。」

「え?」

「手塚さんの腕に負担をかけさせようってことっスか?」

「そんな感じだな。」

「・・・」


それでも手塚は、あえて持久戦を挑んだ。

自分の腕よりも、チームの勝利のために。


「ゲーム青学、6−5!」


しかし、あと1点というところで手塚の肩に限界が訪れた。

駆け寄ろうとする部員を制し、試合を続行しようとする姿を見て、思う。


「なんか・・・凄いね、彼。」

「・・・」


何故、あんな風にできるのだろう。

自分のテニス生命を賭けてまで勝ちにこだわるなんて、そんなこと。

14歳の彼等の姿に圧倒される。

そうだ・・・私は、こういう刺激を求めてこの世界に来たんだ。


「いいね、こういうのって」

「さっきから何スか?ぶつぶつと。」

「いや?青春だなって」

「はあ・・・」


長い長いタイブレークの末、跡部が勝利した。

その顔に、いつもの余裕な笑みはなかった。






2−2、1ノーゲームになったため、控え同士の試合が行われた。


「あ、あの子・・・」

「やっぱ出てきましたね、アイツ・・・」

「うん・・・」


赤也と寝過ごして、青学まで行ったときに出会った漫画上の主人公、越前リョーマ。

試合は、あり得ない程のハイテンションで攻め続けた越前が勝利を収め、青学が2回戦へ進んだ。


「青学か・・・」

「結構レベル高い試合だったね。」

「ああ・・・ところで赤也、」

「んあ?」

「あの青学1年、お前と同じ1本足のスプリットステップだったな。」


そういえば・・・

あれ、赤也以外にできる奴いたんだ。


「アイツ・・・今潰しとかないと駄目っスよね。」







「そういえば、ビデオはちゃんと撮れてるか?」

「え・・・あ・・・うん、多分。」

「見せてみろ」

「あっ、真田、それ押したら全部消え・・・る・・・・・・って遅いね。」

「む!」